zakky's report
忘れっぽい自分のために。。。 映画や本などの備忘録です。 感想というよりも備忘録がメインなので、かなり長いし、ネタバレしまくりです。。。すみません。
冷たい密室と博士たち―DOCTORS IN ISOLATED ROOM
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理系ミステリィ作家、森博嗣氏の「S&Mシリーズ」第2弾。『すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER
今回も前作同様密室モノ。同僚の喜多助教授の誘いで局地環境研究センタ(局地研)での実験見学に来た犀川助教授と無理やりついてきた西之園萌絵。実験終了後の打ち上げパーティの最中、衆人環視の実験室で研究生2名が刺殺されるという事件が発生。
事件解決には乗り気でなかった犀川助教授だが、西之園萌絵の暴走調査に巻き込まれて、ついには巧妙なトリックを暴くことになる。
今回すごいと思ったのは密室トリックがすべて理論立てて説明できる点。あやふやで不確実な要素が排除されており、理詰めできっちり解けるようになっている。さすが理系ミステリィと唸ってしまった。何となく旅人と狼と羊とキャベツの川渡りパズルを思い起こしてしまう。
(「BOOK」データベースより)
同僚の誘いで低温度実験室を訪ねた犀川助教授とお嬢様学生の西之園萌絵。だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室の中で、男女二名の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人は、どうやって中に入ったのか!?人気の師弟コンビが事件を推理し真相に迫るが…。究極の森ミステリィ第2弾。
事件が起きて数週間後から物語が始まる。そこから犀川、喜多、萌絵が事件発生時のことを思い出すという形で事件の状況が明確になる。読み手は「第2章 整理される事前」「第3章 実験と観察」「第4章 発見される事後」で事件について知ることができ、今回のメインの密室殺人事件の重要な手掛かりは、ほとんどここで出てくる。動機はともかく、トリックについては暴けるだけの情報が揃っているんじゃないかと思う。犀川助教授が犯人宛てのメールに『手法はすべて自明。しかし、動機が理解不能。・・・』と書いている通り、動機についてはかなり複雑。
この動機を探る手掛かりになるのが、メインの密室殺人と複雑に絡んで発生する(発覚する)2つの死亡事件だ。ただし、読者にはこのサブ事件も密室トリックを説くためのヒントに思えてしまうので、ここで思考が揺らされてしまう。こうなると解けるものも解けなくなってしまう。
ここまで犀川は事件解決は自分の仕事ではないと考え、事件からは極力距離を取ってきた。ところが、ここで萌絵が暴走調査を始める。自分なりに集めた情報(といっても愛知県警本部長の叔父、西之園捷輔から無理やり入手した警察内部情報だが。。。)と密室トリックの推理を検証するために深夜の局地研に忍び込む。そこで萌絵は犯人に低温度実験室に閉じ込められ、危うく凍死しかけてしまう。ぎりぎりのところで萌絵を助けた犀川は、ここから一気に事件解決へと取り組むことになる。うん、かっこいいぞ犀川。
その後、犀川が独自の推理見解を警察に説明する「第12章 背理の手法」は圧巻。まるで数学の問題を証明するかのような説明だ。複雑に見える事件の核心を「どうやって密室Aの最後の生存者xは脱出したのか」という命題に置き換えて、説明を始める犀川。萌絵と喜多も意図を汲み取り、犀川をサポートすることで、複雑だった問題が徐々に解かれていく。仮説を立てて、その矛盾からその仮説を却下する。そう、章のタイトルでもある背理法を巧みに使い、ある結論へとたどり着く。さらに裏の裏は表、危険の危険は安全、という計算を取り入れ、犯人を割り出す。
そして今回の推理で一番すごいと思ったのが密室に対する考え方だ。推理モノでは当たり前と思っていた密室殺人。しかし、よくよく考えてみると犯人の立場からすれば密室である必然性というのは薄い。犯人の労力の割りには、捜査をかく乱したり逃亡時間を稼ぐくらいにしか使えない密室トリック。今回はこの密室の扱いにも丁寧に説明をつけており、非常に納得感が得られた。
前作の真賀田四季のようなインパクトある登場人物は出なかったけど、密室トリックの解明と密室の取り扱い、そして驚きの動機解明まで含めて、非常によくできていたと思う。個人的には前作以上の評価です。
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ソウ4
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前作
(「Oricon」データベースより)
シリーズ最大規模での公開&最高オープニング成績を記録した、ソリッド・シチュエーション・スリラー第4弾!ジグソウ最後のゲーム現場でパズルを解こうとするホフマン刑事。ケリー刑事殺害のニュースを聞いたFBIから2人の捜査官も駆けつける。しかしその頃、ジグソウに関わり唯一生き残っていたSWATのリッグ刑事が、新たなゲームに強制参加させられ…。日米で上映を禁じられたオリジナル・バージョンを収録。R-15。
前作でジグソウことジョン・クレイマー(トビン・ベル)が弟子のアマンダと共に死亡し、4作目ということもあり、新たな3部作として新たなジグソウが出てくるのかと思いきや、まだまだジョンの巧妙な罠は残されていた。恐るべし。
まず最初に前作で死亡したジョンの検死解剖が行われる。これ細かく描写しすぎです。目を逸らしました。。。(泣) で、何か胃袋から出てきました。。。実はこれ、ジョンの指示音声が入ったマイクロテープ。ここからまた新たな殺人ゲームが始まります。
そういえば冒頭で出てきた殺人ゲームシーンが結構斬新だった。中央の怪しげな装置に鎖でつながれている二人の男。一方は目を塞がれており、周囲を見ることはできない。そしてもう一方はというと、こちらは口を塞がれており、喋ることができない。見えない方は誰かがいることを察知して必死に説明を求めるが、もう一方は喋ることができないから大変。見えない方の恐怖は尋常じゃないだろう。結局殺し合いになってしまった。
で、今回、ジグソウの術中に陥るのはSWAT隊長のリッグだ。仲間のケリーを惨殺され、怒り心頭だったリッグの元に挑戦状が。90分以内にゲームをクリアしないと2人の刑事、エリックとホフマンの命がないという。
早速、ジグソウの音声指示に従って動き回るリッグ。行く先々でジグソウの殺人ゲーム対象に仕立て上げられた人が死んでいく。FBIのストラム捜査官、ペレーズ捜査官がリッグを追って、その凄惨な現場にたどり着くといった流れ。一つ目の殺人ゲーム、女の人の髪の毛が装置にギリギリと巻かれていくシーンはちょっとキツかった。。。
何とか90分ギリギリで同僚の待つゴールにたどり着いたリッグ。ここで最悪の罠が。。。結果的にリッグの判断ミスでエリックは死んでしまう。驚きだったのはこの殺人ゲームの実行者が実は冒頭の殺人ゲームの生き残りだったこと。さらに驚いたのは、この実行者に指示を与えていた主犯格が実はエリック刑事と一緒に死の危機にさらされていたホフマン刑事だったこと。ホフマン刑事は、ジョンの死体の胃袋から出てきたテープを聴いてしまい、ジグソウの術中にハマってしまった不幸な男だったのだ。
というわけで、トリック的には第1作にも似ていて、なるほど〜、と納得する部分も。まぁ、今作の一番の目玉は、何と言っても、あの無茶苦茶おせっかいでサディスティックな殺人鬼、ジグソウの誕生秘話でしょう。ジョンの元妻ジルがいろいろと証言したところによると、ジョンとの間に授かった子どもを薬物常習者の身勝手な行動で流産し、さらに自身への癌宣告。こういった一連の不幸が重なり、命の大切さを知らしめる殺人鬼ジグソウが生まれたという。余計なお世話だ、全く。。。
で、謎は深まるばかりで生死不明な人は多分続編で惨殺されちゃうんでしょう。(泣)
・ソウ4@映画生活
主人公は僕だった
ある作家が書いている作品がある男の行動とリンクしているという何だかよく分からない作品。『トゥルーマン・ショー
(「Oricon」データベースより)
演技派オスカー俳優たちが共演!もし自分の人生に、奇跡のラストシーンが綴られるとしたら…。人生のシナリオを書き変えたいすべての人たちに心より贈る、今までにない感動ファンタジー!ウィル・フェレル、エマ・トンプソン、ダスティン・ホフマン、マギー・ギレンホール、クイーン・ラティファほか出演。
ハロルド(ウィル・フェレル)の日常から物語が始まる。国税庁に勤め、歯磨きの手を動かす回数ですら毎日全く同じという規則正しい生活をしている男だ。そんな男の頭の中で突然女性のナレーションが聞こえ始める。周囲には聞こえず、自分にだけ聞こえているその声は何かの物語を読んでいるような語り口。しかも自分の行動を正確に追っているから気味が悪い。
なんだかよく分からないが、ただ自分の行動を描写するだけであれば害はない。気味悪がりながらも規則正しい生活を続けるハロルド。しかし、その声がハロルドの死を匂わすことを語ったため、事態は一転する。
医者ではどうにもならず、文学専門のヒルバート教授(ダスティン・ホフマン)を頼るハロルド。ヒルバート教授の協力を得て、いろいろな実験をし、この物語がどうなるのかを探っていく。そんな中、偶然テレビで例の声と同じ声の女性が喋っているのを見かける。なんとその声の主は、悲劇作家カレン(エマ・トンプソン)だった。ヒルバート教授によれば、カレンはこれまで全ての主人公を殺している大悲劇作家だと。。。
何とかカレンに接触し、主人公を自分を殺さないように懇願するが、その作品の草稿を読んだヒルバート教授は、この作品は文学史に残る傑作で、それには主人公の死が絶対に必要だと説く。つまり作品のために自分の死を受け入れろと。一時は落胆したハロルドも草稿を読み、ついに自身の死を受け入れることに。。。
正直、実在の人間の命と引き換えにするほどの作品ってどんなんだろう?と思ったが、とてもそれほどの作品とは思えなかった。主人公の死に方が斬新なんだろうと思っていたが、それほど大したことないし。。。結局、最後はカレンがハロルドを殺せず、ある意味彼女が一番まともだった。
カレンの作品とハロルドがリンクしてしまった理由もよく分からんが、ハロルドの腕時計と規則正しさが関係しているのか?とも思った。それに人命と引き換えにできるほどの文学作品というのも理解できないし、とにかく理解し難い作品だった。ファンタジーものなのであまり深く考えちゃいけないんだけど、ハロルドのキャラクター設定が普通に現実的すぎるので、ファンタジーモノとして割り切れないところが多々あった。それが残念。
あ、ちょっと触れるタイミングがなかったんだけど、一応ラブストーリーの要素もある。国税庁職員として監査に入った店の女性と恋に落ちる。初めはお互いの立場から反発しあった二人だが、ハロルドの告白で結ばれる。このベタな話はまぁ、よかったかな。ただ、相手役の女性に魅力を感じられなかったのが残念だ。
・主人公は僕だった@映画生活
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僕の彼女はサイボーグ

あの『猟奇的な彼女
全体的に『猟奇的な彼女』を彷彿させる構成で、最後のどんでん返しっぷりもスゴイ。一番の見どころは綾瀬はるかのキュートなサイボーグ役。綾瀬はるかって今までパッとしないイメージがあったんだけど、こんなにキレイな人なのか、と見直してしまった。ジロー役の小出恵介も『猟奇的な彼女』のキョヌと重なる感じでハマリ役だったと思う。
あ、それからMISIAの主題歌がこの映画にすごく合っていていい感じだった。
(シネマトゥデイより)
21歳の“僕”(小出恵介)を救うために未来の“僕”が現在の自分に送ったという最高にキュートな“彼女”(綾瀬はるか)は、やることなすことすべてが大胆でラフなサイボーグだった。“彼女”は“僕”のピンチを幾度となく救ってくれるが、感情を一切持たない“彼女”に思いが伝わらず、“僕”は一方的に別れを告げてしまう。しかしそれは、決して起こるはずのなかった、運命を変えてしまう“恋”の始まりだった。
えっとネタバレ注意です。
20歳の誕生日を迎えた北村ジローは、彼女もいないということで、自分で自分にプレゼントを購入。そんなやついるか? そんなジローの前に突然現れたかわいい彼女(綾瀬はるか)。彼女と束の間の幸運な時間を過ごすが、彼女はその日限りで姿を消してしまう。
そして1年後、21歳の誕生日を迎えたジローの前に再び彼女が現れる。しかし今度は何か様子が変だ。レストランで機関銃を乱射するイカれた犯人からジローを守るなど、何かやたら強い。で、ジローの部屋に行くと、目からホログラム映像が映写され、彼女は未来のジローが現在のジローを救うために送り込んだサイボーグだという説明を受ける。何だかよく分からないまま、彼女との共同生活が始まった。
サイボーグとはいえ、見た目は人間そのもので、しかもめちゃくちゃカワイイ。ジローにとっては本当に幸せな日々だった。しかし彼女には心がないことをジローは気づき、そして悩み始める。そしてついには自分の前から消えるように彼女に命令する。命令に従い姿を消した彼女。そんな折、東京で突如大震災が発生し、ジローは巻き込まれてしまう。
ジローのピンチに再び彼女が活躍し始める。実は姿を消しつつも、隠れてジローを見守っていたことが分かる。サイボーグの能力を全開まで使って守ろうとする彼女。最後は自らの命(?)と引き換えにジローを守り抜く。半身になった彼女は、「ジローにこんな姿を見られたくない」と初めてハートの通った言葉を発する。ここ号泣。しかし、次の瞬間、ジローの目の前で彼女はビル崩落に巻き込まれて壊れてしまう。。。
ここから先はどんでん返しの連続だ。ここで20歳の誕生日に現れた最初の彼女の謎も解ける。大震災から60数年後、ジローはやっと彼女の修理に成功する。ここで終われば普通の作品。しかしここで終わらない。さらに数十年後の歳月を経て、とうとう彼女はある方法で生身の人間へと生まれ変わる。うーん、かなり複雑ですぐには理解できないが、これはかなりよく考えられている。誕生ケーキの儀式の学習とか彼女が持っていたマスコットの出所など、説明つかない矛盾も結構あるが、物語の大勢には影響しない些細なこと。こういう細かいところをつっこむのは野暮というものだろう。
で、結果的には生身の体を得た彼女が再びジローに会いに来るわけだが、そこに至る彼女の心の動きとか、再開後のこととか、その辺のことももう少しきちんと描いてほしかった。前半にジローの故郷に行くという意図がよく分からないシーンがあったので、あそこは逆に削ってほしかった。
・僕の彼女はサイボーグ@映画生活
果断―隠蔽捜査2
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『隠蔽捜査
前作で長男がヘロインを吸引するという不祥事を起こし、警察庁長官官房総務課長から警視庁大森警察署署長に左遷させられた竜崎。所轄に飛ばされても性格は変わらず、我が道を行くといった感じだ。
難しい判断を迫られても、与えられた情報に基づいて自信を持った決断をすること、すなわち果断の重要性を再認識させられる作品。
前作では感じなかったが、所轄の面々と気持ちが通じた今作は、『踊る大捜査線
(オンライン書店ビーケーワンより)
警察庁から大森警察署署長に左遷されたキャリアの竜崎伸也。その管内で強盗犯の立てこもり事件が発生。混乱する現場で対立する捜査一課特殊班とSAT。現場で指揮する竜崎の決断は?。「隠蔽捜査」シリーズ第2作。
大森署管内で消費者金融の強盗事件が発生する。緊急配備が敷かれたが、犯人3人のうちの2人が大森署前の警備をすり抜け、別の場所で警視庁捜査員に逮捕されるという大失態を晒す。警視庁第二方面本部の野間崎管理官が面子を潰されたとカンカンになって大森署に乗り込んでくるが、下らないことに時間を費やされたくない竜崎はこれを軽くあしらう。ここ、なかなか痛快だ。
しかし本当の事件はここからだった。犯人グループの最後の1人が拳銃を所持し、大森署管内の小料理屋『磯菊』に立て籠もったのだ。
警視庁刑事部長が大森署の指揮本部に詰め、竜崎が現場正面の前線本部に陣取る完全体制で挑む。犯人は『磯菊』経営者夫妻を人質にし、実弾10発以上を持っているとの情報が入り、ハイジャックやテロ事犯などのスペシャリスト集団SIT(捜査一課特殊班)が現場に駆けつける。さらにしばらくして、今度は突入のスペシャリスト集団SAT(第六機動隊第七中隊)が到着。現場は微妙な空気に。SITもSATもほぼ同じ目的で組織されているが、前者が刑事部所属で情報と交渉力が武器なのに対し、後者は警備部所属で突入と制圧の能力に長けている。
当初SIT下平係長に現場の指揮権を渡し、あくまでも交渉による解決を目指した竜崎だったが、犯人が交渉する意思を全く見せずに膠着状態が続くと伊丹の指示を無視してSATによる突入を決意する。SATは慎重に突入体制を整え、一気に突入し、あっという間に制圧する。犯人射殺という結果は好ましくなかったが、人質を無事に解放したことから警察は安堵に空気に包まれた。
しかしその後に警察を揺るがす新事実が発覚する。何と犯人所持の拳銃には実弾が残っていなかったのだ。つまり悪い見方をすれば、SATは丸腰の犯人を射殺したと取られてしまう。しかも、その事実を東日新聞にすっぱ抜かれてしまった。
確かに事実ではあるが、突入時は犯人が実弾を残していないという情報がなかった上、人質の疲労など多角的に考慮した結果であり、竜崎はその決断に間違いはなかったと自信を持っていた。しかし、警察庁小野崎首席監察官の厳しい査問に心が揺らいでしまう。
さらにこれまで竜崎を支えてきた妻の冴子が倒れ、仕事も家庭もうまく立ち回れない不甲斐なさで完全な弱気モードに。
そんな八方塞がりの竜崎を救ったのは、現場捜査官がふと気付いた違和感だった。誰もが見過ごしていた些細なことだったが、これが基点となり、今回の立て篭もり事件の構図がガラッと変わる。これによりそもそも問題視されてきたSATによる犯人射殺自体がなかったことになる。結果竜崎は処分を免れただけでなく、またもや警察を救うこととなった。
前作は竜崎一人が奮闘して警察組織を守った感じだったが、今回は周りに助けられての危機脱出だった。あの堅物竜崎の周囲を見る目がかなり変わってきたのが印象的だ。
一番見方が変わったのは大森署のベテラン刑事戸高だ。彼は前作で大森署を訪ねた竜崎を邪険に扱い、竜崎の信用を完全に失っていた。しかし、今回竜崎の窮地を救ったのは戸高の経験による気付きだった。これをきっかけに竜崎は戸高に対する見方を変えた。
大森署の貝沼副署長も見方が変わった一人だ。竜崎は自分の指示を無表情に淡々とこなす貝沼に対し、自分のやり方に不満を持っているものだと誤解していた。その誤解は最後に解け、竜崎は貝沼から所轄という組織を信頼するよう、そして『所要の措置を取れ。』この言葉だけで現場の人間は動くということを説かれた。
また、家族に対する見方も大きく変わった。妻が倒れたことをきっかけに妻のありがたみを感じ、また、長男邦彦から見せられたDVDで日本アニメの見方が変わったのも印象的。タイトルは出なかったが、明らかに『風の谷のナウシカ
あ、最後までダメダメのまま終わった人もいた。野間崎管理官だ。竜崎曰く、小物に立場や権限を与えるとこうなるという見本とのことだ。かなり笑える。
まぁ、とにかくいろんな面で楽しめた。続編出ないかなあ。ぜひシリーズ化してほしい。
隠蔽捜査
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警察庁キャリア官僚が主人公の異色警察小説。主人公竜崎は東大法学部卒の警察庁キャリア。階級は警視正、役職は警察庁長官官房総務課長というバリバリのエリート。
それにしてもこの竜崎のキャラが強烈だ。原理原則を重んじるかなりの堅物で周囲からは変人呼ばわりされている。変人呼ばわりされても気にもせず、自分を貫く。ある意味一本筋が通っている。曲がったことが大嫌いで自分に厳しく他人にも厳しい。なあなあ主義の人には煙たがれているがそんなことはおかまいなし。妻の冴子にまで世間とずれているなどと言われている。
そんな主人公が警察組織と自身の危機に直面し、窮地に追いやられながらも決断を下すという骨太小説だ。
あ、警察官僚といって真っ先に思いつくのは『踊る大捜査線
(オンライン書店ビーケーワンより)
【吉川英治文学新人賞(第27回)】警察組織を揺るがす大事件に直面したエリート・キャリア。組織を、そして自らを守るために、彼が下した決断は…。霞ケ関の本庁舎でキャリアの孤立無援な闘いが始まった。警察小説の新天地を拓く書下ろし長編。
物語は警視庁綾瀬署管内で起きた暴力団組員殺害事件から始まる。暴力団同士の抗争によるものと思われたが、竜崎の部下、谷岡広報室長によるとこの事件の被害者が実は十数年前に世間を騒がせた女子高生誘拐監禁強姦殺人死体遺棄事件の共犯者とのことだった。
その数日後の深夜、竜崎の家の電話が鳴る。電話の主は警視庁刑事部長の伊丹だ。先の殺人事件で捜査現場を仕切っていた伊丹が、今度は埼玉県で起きた殺人事件について報告してきた。この事件の被害者も女子高生誘拐監禁強姦殺人死体遺棄事件の共犯者だった。
さらに3件目の類似事件が警視庁大森署管内で発生。事件こそ違うがやはり凶悪な少年犯罪の犯人が犠牲になった形だ。そして捜査の結果、これら一連の事件は現職警察官の犯行ということが濃厚となり、警察庁内部ではもみ消しの不穏な動きが出始める。
そんな警察機構の大ピンチの最中、竜崎は自分の家庭の問題も抱えることになる。期待していた長男邦彦が自室でヘロインを吸っている現場を目撃してしまったのだ。周囲からはもみ消しを勧められ、自身の出世や娘の婚姻話などが絡んだ複雑な話へと発展していく。判断に迷いが生じた竜崎だったが、警察庁と家庭という二つの不祥事に直面し、ついに決意することになる。
竜崎は警察の不祥事も自身の不祥事もすべて隠さず表に出すことにした。何かを隠すために工作をしても、それが露呈しそうになった時の上塗りは最初の工作以上のエネルギーが必要となる。それが連鎖して次第に大問題へと発展してしまう。だから最初から真実を公表するのが一番傷が浅く済む。竜崎はそう考え、全てを公表することにした。
結局、竜崎に敵対していた坂上捜査第一課長が飛ばされることに。伊丹にもみ消しを指示したことが警察庁長官に伝わり、長官の激昂を買ったためだった。竜崎の上司、牛島参事官も当初はもみ消しを黙認していたが、竜崎に諭され真実公表路線に移っており、結果的に竜崎に救われた形だった。
一方、竜崎自身の不祥事は警察庁で処分されることになる。竜崎に恩義を感じていた牛島参事官の口添えのおかげもあり、大森警察署の署長となることが決まった。左遷には違いないが、最悪の場合、地方の小さな所轄に飛ばされることも想定していただけに、それほど悪くない人事だと感じていた。息子の邦彦も保護観察処分と予想以上に軽い処分で済んだ。というか、竜崎が堅物だったため、勝手に重刑を想像していただけだが。。。
こうして、警察と竜崎を巻き込んだ不祥事は実にきれいな形で決着がついた。
非常に楽しめたがボリュームが少し足りなかったのが残念。もう少し量が多くても良かったかなぁ、と。続編、『果断―隠蔽捜査2
ジャンパー

こ、これは、、、久々にヒドイ映画を観た気がする。。。
スフィンクスの頭上とかジャンプしまくる予告編に魅了されて、というか騙されて、劇場に観に行ったんだけどちょっとヒドい。テレポートというこんなオイシイ題材でよくこんなつまらんストーリーにできたもんだ、と感心してしまうほど。。。
映像はそれなりに楽しめたけど、ストーリーがダメすぎる。短い映画で助かった。。。
(シネマトゥデイより)
シガン州の高校生デヴィッド(ヘイデン・クリステンセン)は、自分にテレポート能力があることを発見。母が家を出て以来、人が変わった父との生活にうんざりしていたデヴィッドはニューヨークへと向かい、瞬間移動した銀行の金庫室で大金をせしめる。しかし、そんな彼を謎の男ローランド(サミュエル・L・ジャクソン)がつけ狙い……。
主人公のデヴィッド(ヘイデン・クリステンセン)がとにかく軽率すぎる。これまであまり目立たず暗い性格だったのに、ジャンプ能力に目覚めたら人が変わったようになる。いきなり銀行の金庫室にジャンプし、あり得ないほどの大金を掴む。この時点で主人公に嫌悪感を持ってしまった。
そして、ジャンパーを駆逐する謎の集団パラディンが登場する。もう何かこっちの方が正義な気がしてくる。パラディンのボス、ローランド(サミュエル・L・ジャクソン)もかなり無茶苦茶するが、こっちは見た目も怖いので何か違和感なく受け入れてしまう。。。
で、パラディンに追われて何かヤバイぞ!ってなったデヴィッド、何をトチ狂ったのか昔好きだった女を旅行に誘う。。。なんてアホなんだ。。。みすみす彼女を危険に晒しているだけだろう。。。
そして、パラディンに追われ孤軍奮闘してるところに強力な助っ人が登場。ベテランジャンパーのグリフィン(ジェイミー・ベル)だ。何か心強いのにやっぱり足を引っ張るデヴィッド。ヤツのせいで、これまでパラディンに見つかっていなかったグリフィンのアジトが見つかってしまう。
その後、デヴィッドとグリフィンが仲間割れをし、世界を又にかけた追いかけっこを始める。チェチェン紛争地帯で送電線か何かに巻きつけられて置き去りにされたグリフィンは無事なんだろうか。。。
最後はパラディンのボス、ローランドもどっかの絶壁の洞窟みたいなところに置き去りにしてデヴィッドの逃げ切り勝ち。うーん、何か釈然としない。。。
そういえば途中で渋谷とか出てきたけど、あれは何か意味があったのかな?よく分からなかった。。。
・ジャンパー@映画生活
そして殺人者は野に放たれる
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心神喪失者および心神耗弱者の責任能力について規定された刑法第39条。よく精神障害者は罪を問われないとかって聞くけど、これほどまでとは。。。
この本は、精神障害犯罪者が罪を問われず、すぐにシャバに解放され、そして犯罪を繰り返す、という日本法曹界の闇の部分を明白にした筆者の執念のリポートだ。
正直なところ、精神障害犯罪者は病院で服役するみといった間違った知識を自分は持っていた。場所が精神病院というだけで、あくまでも服役しているのだと。ところが、この本を読んで分かったのは、入院は純粋に治療のためであり、服役でも何でもない。だから数ヶ月もすれば退院(釈放でない)して、普通に社会に戻ってくる。そもそも無罪なので刑に服す必要もないし、もっとすごいのは犯罪事態がなかったも同然に扱われることすらあるという。これには本当に驚いた。
加害者側が手厚く扱われる一方で、被害者側が全く救われていない理不尽さは、『心にナイフをしのばせて
(「BOOK」データベースより)
「心神喪失」の名の下で、あの殺人者が戻ってくる!「テレビがうるさい」と二世帯五人を惨殺した学生や、お受験苦から我が子三人を絞殺した母親が、罪に問われない異常な日本。“人権”を唱えて精神障害者の犯罪報道をタブー視するメディア、その傍らで放置される障害者、そして、空虚な判例を重ねる司法の思考停止に正面から切り込む渾身のリポート。第三回新潮ドキュメント賞受賞作品。
まず冒頭、息子を通り魔殺人で失った母親の叫びから始まる。加害者は精神鑑定の結果、不起訴となっている。この不起訴というのがまたたちが悪い。起訴されて裁判の判決として出るのが無罪であり、憲法で保障された裁判にすらかけらないのが不起訴だ。つまり不起訴とは、事件自体がなかったような状態になってしまう。加害者側からすれば不起訴ほど理不尽な話はない。
この後も続々と”心神耗弱”や”心身喪失”の名の下に、刑の軽減や無罪判決が出されたり、不起訴にされたりと、とにかく理不尽のオンパレード。裁判に負けると出世に響くからと起訴や上告をためらう検察のヘタレぶりや鑑定人次第で結果が決まる精神鑑定には呆れて何も言えない。検察や鑑定人はことの重大さを理解してるのだろうか?
また、さらに理不尽なのは、覚醒剤やアルコールによる心神耗弱も刑の軽減を適用されるという。加害者が勝手に使った覚醒剤やアルコールにより殺されたら死に損になってしまう日本の刑法の脆さ。社会正義も法秩序もあったもんじゃない。
本書によれは、日本の刑事裁判では、「正常」な犯罪者には厳罰を与え、「若干ヘン」な犯罪者には心神喪失や心神耗弱を適用し、「かなり異常」な犯罪者は存在しないこと(不起訴)になっているという。また裁判では、加害者弁護側が心神喪失による無罪を主張し、検察側が完全責任能力を主張する。すると裁判所がその中間の心神耗弱を適用して減刑にする、という安易な構図になっているらしい。腐っている。。。
とまぁ、そうはいってもこういった理不尽な話はそうそう起きてないだろう。あんまり新聞やテレビでも見かけないし、、、なんてムリヤリ楽な方に考えていたんだけど、なんと毎年100人以上の殺人者が心神喪失の名の元に不起訴または無罪放免になっているらしい。え?マジで??? どうやら人権配慮とかでこういった事件は報道されてないため一般的には知られていないというのが本当のところらしい。法曹界だけでなくマスコミにも責任の一端があるのかもしれない。
こうして、最後まで暗く重い話題が続く。最後まで読んでも明るい話題はあまりない。それでも読んでよかった思わせるのは、筆者の熱意と力量だろう。この本は少しでも多くの人に読んでもらいたいと思った。特に法曹界、司法関係、マスコミ関連、精神医療関係、それから国会議員の方々は必読です。
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警官の血 下巻
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いよいよ下巻。上巻(こちら)で残された謎に決着がつく。できれば、もう少し意外性がほしかったかも。それでも、親子三代に渡る警視庁警察官の運命と結末の描写は見事で、ミステリーよりもこちらの方が本作品の本当の焦点なんだろうと思った。
(オンライン書店ビーケーワンより)
過激派潜入の任務を果たした民雄。だが、父の死の真相を?みかけた民雄に銃口が向けられる。そして息子の和也も警官となり、特命を受ける。半世紀を経て、和也が辿りついた祖父と父の死の真実とは?。警察官三代の運命を描く。
下巻は第2部の続きから始まる。公安の潜入捜査官から一介の制服警官に戻れた民雄は「血のつながらぬ叔父」の一人、香取の口添えで天王寺駐在所勤務となる。父清二が謎の死を遂げるまでの3ヶ月間勤務し、そして息子の民雄も過ごした駐在所だ。
駐在所勤務になるまでの民雄は潜入捜査のストレスから不安神経症となり、酒を飲むと人が変わり、妻の順子にも暴力を振るってしまっていた。家庭は荒れ、息子和也からも避けられる始末。そんな、民雄も町の駐在さんになってからは精神的にも安定し、家族との距離も取り戻してきた。その一方で因縁の天王寺駐在所に勤務することになり、父清二の死の謎に迫ろうともしていた。
民雄は地元の住民や警視庁の関係者などの伝をたどり、清二の死の真実に近づこうとしていた。そこで分かってきたのは、清二が死の直前まで独自調査していたミドリ殺害事件、鉄道員殺害事件の捜査線上に警察の影がちらついていたこと。そして、ついに決定的な事実をつかむ。清二が死んだ日に起きた五重塔火災騒動の古い写真に思いがけない人物が写っているのを知る。ここから真実に迫るのかと思った矢先、駐在所管轄内で起きた拳銃所持立て篭もり事件の現場で犯人の銃弾に倒れてしまう。。。問題の写真、読み手には誰が写っていたか分からないまま、第2部が終わってしまった。ちなみに今度は殉職扱いとなった。
続いて第3部、和也の物語が始まる。警察官だった祖父、父を継ぎ、やはり警察官となった和也。誠実、実直、生真面目といった祖父や父のDNAは着実に受け継がれているように思われる。主に知能犯や経済犯罪を扱う捜査二課を希望していた和也だが、配属されたのは暴力団を相手にする捜査四課。といってもある捜査官の内偵という特命を与えられての異例の配属だった。
内偵対象となった加賀谷係長は都内の裏組織と独自の情報網を構築していた。違法行為も織り交ぜた加賀谷のやり口は、巨悪を封じるための必要悪とも思えたが、和也は着々と内偵を進めていく。そこには真っ直ぐ誠実型だった祖父や父にはない強さも見出せた。和也の恋人永見由香が加賀谷と浮気したことも引き金となり、後味の悪い形でこの内偵を成功させる。
その後、ついに三代目にしてミドリ殺害事件、鉄道員殺害事件、そして祖父清二の死の真相を突き止めることになる。いや、正確には二代目民雄も死の直前にこの真相を知っていたことが明きらかになる訳だが、それがちょっと意外性もなく、ここまで引っ張っといてそれだけ?と思ってしまった。今さら、これは性犯罪だったんだとか言われても、ふーん、、、って感じで、その辺はもうちょっと捻ってほしかった。
加賀谷への内偵が終わりしばらくして和也は希望の捜査二課に配置換えとなる。祖父から受け継がれたホイッスルを胸にぶらさげ、加賀谷から支給された高級腕時計を身に着けた和也。祖父や父から受け継いだ実直型の正義感だけでなく、加賀谷や例の犯人から学んだしたたかさ、ずぶとさ、たくましさをも兼ね備えた親子三代警察官の集大成のような警察官となっていた。
警察内部の描写もリアルで、親子三代警察物語としてだけでも十分な内容だったのに、なぜミステリー仕立てにしたのかなぁ、というのが一番の感想。三代に渡って残された謎にしては結果があっさりしすぎだし。。。それでもこれだけのボリュームをテンポよく読めて、読後感はお腹いっぱいといった感じ。かなり良かったと思う。
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警官の血 上巻
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『このミステリーがすごい!』2008年版国内部門第1位作品。上下巻はきついなぁ、ということで見送ってたんだけど、『赤朽葉家の伝説
ただ、この上巻は警官親子三代記の初代清二と二代目民雄の警官話がメインとなっており、然したる謎解きはない。物語り全体を包む大きなミステリーが下巻へと引き継がれる。上巻読み終えたらすぐに下巻を読みたくなる上手い構成だ。
全体としてストーリー展開が速く、ある意味あっさりと季節や年代が過ぎ去っている。(みんなあっけなく歳を重ねていくし、死んでしまう。) それでいて物語に一貫性が保たれているため、普通に読んでいてあまり迷わず、突然の再登場人物も結構普通に思い出せたりする。あまり無駄な登場人物はいないといったこともあるが、その辺が非常に読みやすい。
(オンライン書店ビーケーワンより)
ある夜、谷中の天王寺駐在所長だった安城清二は、橋から転落死する。志を継いで警官になった息子の民雄だったが、命じられたのは北大過激派への潜入捜査だった?。戦後闇市から現代まで、時代の翳を描き切る警察小説。
第1部は初代清二の物語。終戦直後、定職に就いていなかった清二は子を授かったことをきっかけに警官になることを決意。昭和23年は警視庁が組織整備のために大量採用を敢行。そこに乗る形で清二は警官への道を進むことに。同時期に採用された3人(窪田、早瀬、香取)と意気投合し、この3人が後に二代目民雄に深く関わってくることになる。
清二の妻、田津は警官になった清二に出世は望まず、地元の優しい警官として駐在所勤務を目指して欲しいと願う。そんな願いをかなえるために清二は地道に派出所勤務をこなしていく。
上野警察署に配属され公園前派出所勤務となった清二は園内に住み着く浮浪者集団と上手い距離を保ちながら勤務に励んでいた。そんな最中、顔見知りだった美形の男娼ミドリが変死体となって発見される。この事件が後々まで尾を引くことになる第1のミステリーになる。
この事件から4年後に第2のミステリーが。今度は勤務地管轄外だったが、清二が住んでいる長屋の裏手にある谷中墓地で殺人事件が発生。被害者は10代半ばで美しい顔立ちの鉄道員だった。被害者の特徴からどうしてもミドリの殺人事件との類似性がクローズアップされてくる。
その後、持ち前の洞察力でいくつかの大捕り物を重ねた結果、35歳にして希望通り天王寺駐在所勤務に就くことになる。この時、長男民雄は8歳だった。この駐在所勤務わずか3ヵ月後に運命の第3のミステリーに遭遇。それは上巻プロローグでも書かれていた五重塔の火災騒動。プロローグでは伏せられていたが、この騒動の最中にミドリ殺害事件、鉄道員殺害事件の鍵を握る人物を追うことに。そして、あと少しで追い詰められるというところで清二は殺されてしまった。いや、実際に殺されたかどうかは書かれていないので、正確には殺されてしまったと思われる、といったところ。この清二の死が第3のミステリーで、この作品の最大のミステリーとなる。
続いては第2部。清二の息子、民雄の警官物語となる。清二の不慮の死は火災騒動の最中に持ち場を離れたことが災いし、殉職扱いとはならなかった。そのため、田津、民雄、正紀の母子家庭は貧しい暮らしを強いられていた。父親清二の同期の窪田、早瀬、香取の3人が「血のつながらぬ叔父」として民雄を支援し、民雄は何とか高校を卒業。そして父と同じ警視庁に入ることになる。
成績優秀な民雄は公安部の笠井に目をかけられ、北大の左翼学生グループに潜入捜査官となることに。行き詰る潜入捜査の結果、赤軍派のテロを未然に防ぐ成果をあげた民雄。その後も別の潜入捜査で大きな成果を上げた民雄だが、その代償は大きく不安神経症を患ってしまう。
その後、民雄は静養していた警察機関の保養所で知り合った順子と結婚し、何とか制服警官に戻ることが認められる。結婚後も順風満帆とは言えず、不安神経症が完治しないまま内勤部門で燻っていたが、そこで民雄は自分が警察官になった本当の目的を思い起こす。父の死の真相を知るというのが目的だった。
以上で上巻は終わり。第2部民雄の物語はこのまま下巻へとつながる形になっている。先にあげた3つのミステリーは未解決のままだ。
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