zakky's report
忘れっぽい自分のために。。。 映画や本などの備忘録です。 感想というよりも備忘録がメインなので、かなり長いし、ネタバレしまくりです。。。すみません。
死神の精度
|
久しぶりの伊坂作品。『グラスホッパー
ちなみに本作品は2008年3月に映画化されてるんだけど、タイミングが合わずに劇場には見に行けなかった。原作とはまた違った話になっていて、なかなかいいらしい。DVD(『Sweet Rain 死神の精度 スタンダード・エディション
(「MARC」データベースより)
「俺が仕事をするといつも降るんだ」 クールでちょっとズレてる死神が出会った6つの物語。音楽を愛する死神の前で繰り広げられる人間模様。『オール読物』等掲載を単行本化。
本作品の死神の設定は絶妙だ。会社組織みたいになっていて、死の対象者に関する情報を扱う「情報部」、その対象者に接触して調査する「調査部」といった具合に分かれている。人間界に派遣される調査部の死神は、名前は町や市の苗字が固定で割り当てられていて変わらないが、容貌については毎回そのターゲットに接触しやすい外見に変えられる。また、なぜか音楽(ミュージック)にご執心で、CDショップの視聴ヘッドフォンに集まってくる。ミュージックプレイヤーとか買えばいいのに。死神界にはそういったものがないのかな?
主人公の千葉は調査部員として対象の6人に接触し、その死について「可」か「見送り」かを判定する。この千葉のクールさとズレさ加減、それにKYぶりがまたたまらない。ヤクザや殺人逃亡犯にもビビらず、周囲がどんなにあたふたしていてもマイペースを貫くクールさもいいが、雨男と雪男を一緒のくくりにしたり、「でも、甘く見てると意外に、吹雪、長引くかもしれねえよな」に対し、「甘い? 吹雪に味があるんですか?」と返すズレっぷりも持ち味だ。また、密かに用意していた入手困難チケットを相手の女性も用意してくれたことが分かり、男は自分のチケットの存在を隠して「これ、行きたかったんですよ」と応えるも、千葉は「このチケット、おまえも持ってるじゃないか」といらんことを指摘してしまう。うーん、クールなだけでもズレてるだけでもダメで、こういう相反する属性を合わせ持つキャラが一番魅力的なのかも。あと、音楽に目がなく、ヘッドフォンを見ただけで「ミュージック!」と叫んでしまう千葉には笑えた。
さて、千葉が死の可否を調査する対象者は以下の6人だ。それぞれが連作短編形式で綴られていて、余韻を残した終わり方は見事だ。
・藤木一恵…大手電機メーカーの苦情処理係の冴えないOL
・藤田…自分のせいで兄貴分が殺され、その復讐に燃える今時珍しい仁侠魂を持ったヤクザ
・田村聡江…女に騙され服毒自殺した息子の復讐を夫や知人と企てた母親
・荻原…イケメンをダサ眼鏡で隠しつつ、向かいのマンションに住む女性に恋する青年
・森岡…幼い頃に誘拐されたトラウマを引きずり、自宅で母親を刺し、街で若者を刺殺した逃亡犯
・新田…周囲で死神による死が多く、海が見える高台の美容院を営む老女
個人的には逃亡犯森岡の話が一番楽しめたかな。幼少時のトラウマの誘拐犯の一人を殺すために十和田湖を目指すが、その旅路で千葉と接することで森岡の心が揺れ動いていく。殺人逃亡犯であることを伝えても一向にビビらない千葉に最初は苛立った森岡だったが、徐々にそのクールさを頼るようになる。
まぁ、ステーキを食べる森岡に「死んだ牛はうまいか」と言ってみたり、「これは」「やばいくらいに」「うますぎる」と肉料理を頬張る森岡を見て、同じく「これは」「やばいくらいに」「うますぎる」と人参を頬張ってみたり、そういったズレさ加減も発揮してくれて思わず笑えてしまう。
それでいて、目指していた幼少時のトラウマの誘拐犯の一人が、実は犯人ではなく、森岡を助けてくれたのではないかと独自の推理を展開。最初は聞く耳を持たなかった森岡だったが、最後の最後で心を開く。結構感動した。
あ、途中の仙台では『重力ピエロ
あとは最終の老女の話。なんとこの老女が荻原が恋した女性であることが判明する。荻原が死んでからの50年、彼女の半生が垣間見えて作品全体に奥行きが出てくる。さらに6人のうち、唯一(と思われる)「見送り」と判定された藤木一恵がその後ミュージシャンとして成功したことも分かり、こういった仕掛けが伊坂チックでよかった。
|
|
|
|
グラスホッパー
|
伊坂幸太郎作品、ちょうど読了10作品目。殺し屋バトルロイヤルに巻き込まれた普通の青年の話。
妻を理不尽に轢き殺され、その復讐のために教職を捨てて悪徳非合法企業≪令嬢≫に潜入した主人公の鈴木。相手に自殺をさせる特殊能力を持つ自殺専門の殺し屋、鯨。若くて殺し屋の癖によく喋るナイフ使いの蝉。
この3人の視点に次々と切り替わる多視点型一人称小説。伊坂得意の時間軸ずらし技は少ししか出ないのでそれほど混乱せずにスムーズに読めた。手に汗握る予測不能な展開もなかなか良かったと思う。
ただ、最後の真相説明が複雑すぎて、ちょっと、んー???って感じだったのが残念。
(「MARC」データベースより)
復讐。功名心。過去の清算。それぞれの思いを抱え、男たちは走る。3人の思いが交錯したとき、運命は大きく動き始める…。クールでファニーな殺し屋たちが奏でる狂想曲。書き下ろし長編。
鈴木の妻を轢き殺した≪令嬢≫社長の馬鹿息子が車に轢かれて死ぬことで物語が動き出す。どうやら『押し屋』と呼ばれる殺し屋に押されて車に轢かれたらしい。現場に居合わせた鈴木は≪令嬢≫幹部の比予子に命令され、『押し屋』を追跡することになる。
で、この冒頭で死んだ≪令嬢≫社長の馬鹿息子。こいつの酷さにはちょっと飽きれた。飲酒運転で何人轢き殺しても親の力でお咎めなし。部下をけしかけて、わざと人を轢かせたり、通学中の生徒の列に車を突っ込ませたりと、とても正気の沙汰とは思えない。ちなみに親父もスゴイ。この後、『押し屋』がなかなか捕まらないことに苛立って、社員を何人か射殺している。
で、何とかして『押し屋』の家を突き止めた鈴木だったが、幸せそうな家庭を持つ彼が本当に『押し屋』なのか?と疑問を持ち、≪令嬢≫からの連絡要請を無視して、『押し屋』判別のために接触を試みる。子供の家庭教師を売り込むという訳の分からない演技で『押し屋』宅に上がりこむ鈴木。『押し屋』は槿(むくげ)と書いて”あさがお”と名乗る。
一方、蝉と鯨の2人の殺し屋もそれぞれの思惑で『押し屋』を追うことになる。蝉は≪令嬢≫が追っている『押し屋』を先に殺すことで名を上げようとする。鯨は『押し屋』に先を越された過去を清算するために『押し屋』を殺そうとする。
そんな中、報告無視に痺れを切らした≪令嬢≫が鈴木を拉致し、拷問で『押し屋』の居場所を吐かそうとする。そこに現れたのが蝉だ。蝉は≪令嬢≫から鈴木を奪い、鈴木に『押し屋』の家を案内させようとする。と、そこに今後は鯨が現れる。鯨と蝉が直接対決している隙になんと今度は槿が現れ、鈴木を救い出す。
その後、槿が衝撃の真相を告白をする。槿はやはり『押し屋』だった。だが、そもそもなぜ≪令嬢≫社長の馬鹿息子を殺したのか、から始まる全真相はかなり複雑で、ここはもう少しシンプルにして欲しかった。。。
エンディングはこの事件の半年後。結局、鈴木は復讐も遂げられず、悶々とした生活をしていたが、亡き妻との出会いの場所を訪れ、再出発を誓った。何かこの切なさ、やるせなさとちょっとした爽快感が『ゴールデンスランバー
そういえば鈴木も『ゴールデンスランバー
まぁ、この作品、他にもいろいろ見所があって、『オーデュボンの祈り
あ、それから映画監督のガブリエル・カッソ。伊坂作品にはよく登場する監督だが、その作品描写は初めて見た気がする。『抑圧』という作品なんだが、貧しい新聞配達の青年が店主に操られ、精神を蝕まれていくというちょっと暗くて絶望的な映画。正直あんまり観たくないと思った。。。というか、本当にある作品なのかな???
ゴールデンスランバー
|
伊坂の新作。ヤバイ鳥肌が。。。ホント参った。。。コレまで読んだ伊坂作品の中では一番良かったんじゃないかと。
首相殺害の濡れ衣を着せられた青柳雅春。とてつもない強大な敵からの逃亡劇を様々な視点から描写している。さらに伊坂得意の時間軸揺さぶり構成で伏線がいろんな方向からつながっていく。
実際に起きたケネディ大統領暗殺事件が元ネタになっていて、濡れ衣を着せられた青柳雅春はケネディ暗殺犯として逮捕され、直後に不可解な形で暗殺されたオズワルドに重ね合わせることができる。この本の中では青柳雅春は紛れもなく濡れ衣だが、果たしてオズワルドについてはどうだったのか?と思いを馳せてしまうような内容だった。そういえば昔、この辺の疑惑を追及した映画『JFK
(書籍帯より)
首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、巨大な陰謀から逃げ切ることができるのか?
仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆発がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた−。
これまであまり目立たず、周囲にも迷惑をかけずに生きてきた青柳雅春。押しも強くなく、交際相手の樋口晴子からは、このまま付き合い続けても”よくできました”止まり、”たいへんよくできました”はもらえないよ、と一方的に言われて別れてしまう始末。
そんな彼が国家的陰謀に突然巻き込まれ、金田首相殺害犯の濡れ衣を着せられる。しかも警察が違法捜査はするは拳銃はぶっ放すはでなりふり構わず追ってくるので、その逃亡劇は非常に緊迫感がある。ごく平凡な青年が突然身に覚えのない容疑で追われる身となり、訳も分からぬまま逃亡し、不安に苛まされ苦悩する様はあまりにも可愛そうで理不尽に思った。
それにしても時間軸の構成がいつもながら見事。冒頭の第一部、第二部では、テレビ視聴者の視点から事件全体の流れを追う形になっており、読者を一気に物語世界へと引きずり込む。続く第三部では時間が一気に未来へと進む。ここは、あるジャーナリストがまとめた20年前の金田首相暗殺事件に関する記事そのものになっている。こうして第一部から第三部までで事件の全貌とその顛末を部外者の視点で俯瞰することが出来る。
そして第四部でいよいよ当事者青柳雅春を中心としたストーリーが展開される。ボリューム的にも全体の8割近くを割いており、ここが本編と言えるだろう。青柳雅春視点の逃亡ストーリーとそれより若干時間の進んだ樋口晴子視点の周辺ストーリーがタイミングよく切り替わる。途中までは樋口ストーリーが先行するが徐々に青柳ストーリーが追い上げ、第四部終盤に時間がつながり、二人はニアミスする。ここで直接出会わないのにお互いの存在は確かに認識しているところがニクイ。この逃亡劇のラストは自分の予想とだいぶ違っていて、それが”やられた”ではなく、正直がっかり、といったそんな拍子抜けな感想だった。携帯ピポポで花火が上がるのは見事だったけど。。。
そしてラスト第五部は事件の3ヶ月後を描く。ここが伊坂幸太郎の凄いところ。第四部最後でがっかりさせたのは、実はこのラストの感動への伏線でした。ヤバイ鳥肌が。。。ホント参った。。。という冒頭はコレ。冷静に考えると、やっぱり後味悪いんだけど、その後味の悪さを補って、さらに感動させるのは本当にスゴイと思った。「青柳、おまえはロックだよ」の岩崎のセリフ、青柳実家に届いた「痴漢は死ね」の書き初め、青柳の左手甲に押された「たいへんよくできました」のハンコ、すべてが感動へとつながった。
しかも話はここで終わらない。最後まで読み終えた後、もう一度第三部、つまり事件の20年後に書かれたという記事を読むと驚きの事実が。記事の終わりの方で”そこでは森の声も聞こえなかった。”とある。。。この一文からこの記事を書いた人物が浮かび上がり、愕然とさせられた。
アヒルと鴨のコインロッカー
|
やっと読んだ。伊坂作品の中でも1、2を争う有名作品だけど、なんか読む機会がなかった。で、感想としては、うーん、ちょっとインパクト薄かったかなぁ。それなりに面白かったけど、そろそろ伊坂ワールドに飽きてきたのかも。。。
(「BOOK」データベースより)
引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!注目の気鋭が放つ清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。
物語は現在と二年前の2つのパートが交互に進んでいく。現在のパートは椎名が河崎の本屋強奪に巻き込まれていくストーリー。そして二年前のパートは琴美とその恋人でブータン人のドルジ、琴美の元カレでもある河崎の3人がペット殺し騒動に巻き込まれていくストーリー。
この2つのパートを結びつけるのは、どちらのパートにも登場する河崎。この河崎のキャラは最高。そのルックスを武器に、付き合った女性の誕生日で365日を埋めるのが夢と言い切ってしまう。やっぱり伊坂作品はキャラがイキイキしていると思った。
2つのパートは中盤くらいまではほとんど無関係とも思えるほど、独立して進んでいく。両パートに出ている河崎のちょっとした言葉が関連してるくらい。これがどう結びつくのだろう。。。と疑いながら読み進めていく。そして終盤、やはりどちらのパートにも出てくるペットショップの店長、麗子が一気に両パートを結び付けていく。これまでの諸々の伏線が一気につながる。これぞ伊坂マジック!
いやー、河崎のキャラが生きていただけに見事に騙された〜って感じ。確かに後になって読み返してみると、微妙にキャラが違ってる。でも普通気づかないよなぁ。。。うーん、参った。で、このままいい感じで騙されたまま終われればよかったんだけど、エンディングが少し後味悪い。そこが残念。ハッピーエンドだったら間違いなく五ツ星だった。
この作品で一番よかったのはタイトルの付け方かも。アヒルと鴨がそんな形で、そして、コインロッカーがそんな形で登場するとは。。。このネーミングのセンスはほんと素晴らしい。
あ、それから、『陽気なギャングが地球を回す
で、これ映画化されているけど、どんな感じなんだろう。。。映像化するのはかなり難しそうだ。見てみたい。。。やっぱりまだまだ伊坂からは離れられないんだろう。
フィッシュストーリー
|
うーん、ちょっと他の伊坂作品とは異質な一冊な感じが。。。やはり彼の作品は長編の方がしっくりくる。最後の最後で全ての伏線がひとつに重なるといった彼の良さは、やはり短編だと発揮しきれない。この作品はおなじみの人物がたくさん登場するという意味では楽しめた。特に「ラッシュライフ
(「MARC」データベースより)
あの作品に登場した脇役達の日常は? 人気の高い「あの人」が、今度は主役に! デビュー第1短編から最新書き下ろし(150枚!)まで、小気味よい会話と伏線の妙が冴える伊坂ワールドの饗宴。
全4編のうち1本目「動物園のエンジン」は彼のデビュー作らしい。かなり微妙でオチもよく分からなかった。「ラッシュライフ
2本目「サクリファイス」では、あの黒澤が閉ざされた集落に伝わる風習に隠された謎に迫る。これは先が気になって仕方なかった。不気味な風習と現在の闇社会がつながるオチには驚いた。
3本目は表題作の「フィッシュストーリー」。これはなかなか伊坂チック。ある作品を軸にして、過去と現在と未来のちょっとした話がつながっている。30数年前に泣かず飛ばずだったバンドの最後の作品に仕込まれた無音部分が、偶然に偶然が重なりまくって、未来で世界を救ってしまうという、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な作品。唯一、おなじみの登場人物は出てこないが、それなり楽しめた。
そして最後の「ポテチ」はこの本の中ではダントツに面白かった。特に主人公の今村のキャラが良かった。彼はこの作品内で、三角形の内角の和が180°になることやピタゴラスの定理なんかを自力で発見している。「ラッシュライフ
まぁ、全体的には可もなく不可もなくといったところなんだけど、伊坂作品の魅力という観点からはちょっと何かが足りない。初めて伊坂本を読む人にはあまりオススメできない一冊だった。













